アメリカの子供たち

1 近頃の子供

近頃の子供たちは、忙しい。朝七時半から学校。授業は三時半に終わるけれど(日本と違って全学年同じ時間に終わる)、彼らの活動はまだまだつづく。今日はサッカー、明日はテニスとピアノ、次の日はバレエ、というように。音楽は小学生ではじまるが、中学生になるとオーケストラやブラスバンド活動も加わる。しかしなんといっても盛んなのはスポーツだ。土曜日には、あちらこちらの広場で子供のスポーツ試合が行われている。野球、サッカー、フットボール、バスケットボール、陸上、体操と一年中あらゆるスポーツができるのはうらやましい。中学や高校生になると毎週のようにダラスなどの近郊都市で行われる試合に参加する。親にとって土曜日はスポーツをする子供の付き添いだけで終わってしまう。片道200キロくらいのドライブも子供のためなら何のその。そして日曜日は家族そろって教会に行く。みんないつ休んでいるのかな?それともこんなに忙しいのは、子供が非行に走るのを防ぐための親の作戦なのかな?

2 すぐやめるのが上手

子供たちが忙しいのは多いに結構なんだけど、みんな長続きしないんだね。去年はサッカーやったから今年はフットボール。去年はピアノとトロンボーンをやったから今年はバイオリンとバスーンをやるんだという具合。「気持ちの切り換えがうまい」と言えば聞こえが良いが、実はあきらめたりさっさとやめるのが上手なんだな。大人だってやたら転職するし、結婚相手だって何度もかえてるもん。子供は大人を見て育つんだね。

3 過密なスケジュールの中で

私は数人の子供達にピアノを教えているんだけど、みんななかなか上達しない。週に30分会うだけの関係なのでレッスンの後ピアノの練習にどれだけ時間を割いているかが上達の鍵になるんだけど、この忙しいスケジュールの中で心を落ち着けて音楽に耳を傾ける時間があるかどうかが怪しい。ケイトリンという女の子はまだ八歳。夜八時半からレッスンに来る。私たちが八歳の頃は八時半はもう寝る時間だった。最近のアメリカ政府の方針で、音楽の授業は必須でなくなってしまった。選択科目としてとることはできるらしいけど、音楽はあまり重要視されなくなりつつある。子供の創造性、集中力、そして忍耐力を鍛えるのに音楽は役にたっているのにね。

4 おだてられて成長する

そしてやっかいなのが、いつも子供をほめまくる大人たちなんだ。そしてもっとやっかいなのが、ほめられるのを当たり前だと思っている子供たち。僕らは叱られて育つ文化(?)から来たので、最初すごくとまどった。アメリカ人の辞書に「親バカ」という言葉はない。「My Child Is An Honor Student(私の子は名誉生徒です)」などと書かれた立派なステッカーをわざわざ車に貼ってるバカ親はたっくさんいる。みなさん、アメリカで人間関係を円滑にしたいなら、子供をほめましょう。例えばピアノを演奏し終わった子供には「どうだった?」と聞かれる前に必ずほめる。ちょっとでも批判するといじけてやめてしまうのが落ち。叱られた反動で頑張るってことはまずないからね。ところがあんまりほめると今度は「自分はすごい」と勘違いしてしまうんだな。「自分の子供は天才!」と親までもが子供の無能さに気が付かなくなる。ダメ押しに付け加えておくけど、みんな中途半端で終わらせておきながら、今までにやった事のあるものは「自分のできること」と思っている。「僕はね、あれもこれもできるよ」というのには気をつけたほうがいい。たぶん一度やったことがあることを、ならべて言っているだけかもしれないからね。こんなんじゃ、みんないつかガツンと傷付く時が来るだろうにね。それにしても「近頃の子供」を語るなんて、わてらも年老いたもんだ。

Super Star
このステッカーの場合、自分の子供は学校の「スーパースター」だってさ!

[2001年12月30日]

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