テキサス最大のオルガン

3月26日、テキサスで一番大きいオルガンを弾いてきた。カナダのカサバン社製、191ランクで 5段鍵盤。ストップのノブを数えたら、230個もあった。パイプの総数は10615本。カサバン社が作った最大のオルガンで、フランス仕様の楽器としては世界一大きいとも言われている。場所はフォート・ワース市にあるファーストバプティスト教会。

3月24日にウィチタ・フォールズでコンサートをした時は、3月なのに摂氏33度にまで気温が上がった。その調子でコートを持たず、フォート・ワースに旅立ったのだが、25日は零下、おまけに粉雪まで舞い始める始末。テキサスの天気は激しい。特に春はね(竜巻きも来る)。礼拝堂はもうメチャ寒。凍えながら弾き始めたけれど、弾きはじめたとたん、寒さなどぶっ飛んだ。ストップを引いたとたん、体の芯まで震えがくるほどの壮大な音がした。そして何よりも音色が豊かなこと。澄み切った音色のフルート、素朴な味のあるフルート、甘い香りまでしてきそうなオーボエ、力強いトランペット。ストリングスのアンサンブルの音色で昇天した。

ストップ数にも圧倒されたけれど、Division の多さにはもっと驚いた。よくあるアメリカのオルガンはたいてい三段鍵盤で「GREAT (II)」「SWELL (III)」「CHOIR (I)」「PEDAL 」の4つのDivisionを持つ。このオルガンは「GRAND ORGUE (II)」「RECIT (III)」「POSITIF (I)」「CHOEUR (IV)」「SOLO (V)」「BOMBARDE (V)」「CHAMADE (IV)」「PEDALE」「ANTIPHONAL GRAND ORGUE (II)」「ANTIPHONAL RECIT (III)」「ANTIPHONAL PEDALE」と全部で11Division もある!さらに31ランクのパイプ(1756本)は教会の後方にあるので、前からも後ろからもステレオみたいに交互にパイプを鳴らせるのよ。おもしろくって、楽しくって時間がたつのも忘れていたけど、空腹が時を知らせてくれた。近くに日本食レストランはなかったけど、オルガンが素晴らしかったので水に流したよ。

コンサート当日寒かったけれど、多くの人々が足を運んでくれた。プログラムの最後に「殉教者たち」という不協和音の多い連弾曲を弾いたんだけど、明るいテキサスの人にはちょっと重いかなと心配していた。弾き終わった後お客さんは総立ちであたたかい拍手をくれたし、お客さんのひとりが「殉教者の姿が見えるようで感動した」と言ってくれた時はうれしかった。そういえばテキサスは敬虔なクリスチャンの多い州だった。それに演奏会がちょうどキリストの死ぬ直前の受難の週だったので、いい選曲だったかな。

こんな大きなオルガンをいつも弾けたらうれしいけど、毎日この楽器で練習してたら下手になっちゃうよ。だって、心地よい残響のおかげで大きな気分になって、音の間違いやリズムの狂いにまで大らかになってしまいそうだもん。

Broadway Baptist Church
これがテキサス最大のオルガン演奏台
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[2002年4月9日]

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