芝刈り地獄

テキサスで生活していて、今一番つらいのは庭の芝刈りだ。五年ほど前に築十年の家を買った。ここでは乗用車、四、五台分ほどの値段でかなり立派な家が買える。僕らの家には広いリビングルームにカウンター付きのキッチン、部屋は三つあって、バス、トイレは二つある。それに二台分の駐車場と家の前と後ろに芝生の庭がある。プールはない。ここではごく普通であるが、日本では夢のような家である。

はじめは芝刈りが楽しかった。春先はわりと気持ちの良いものである。毎週土曜日にはどこの家でも芝刈りの音が聞こえてくる。近所で誰の庭が一番美しいか競争しているかのように思えてくる。五月はそれなりに雨が降るので、芝生はどんどん成長する。芝を上手に刈れば美しい庭が簡単に出来上がる。それが夏の半ばにもなると、少しづつ家ごとに差が出てくるのだ。毎日強い日射しに40度近い気温。しかも雨がまったく降らない。水をたくさんまかないと緑色の芝はしだいに茶色になりはじめる。逆に水をたくさんまくと芝は元気に成長するため、その分炎天下で芝刈りをする羽目になる。雑草の量や芝生の色などで、どれだけ家の主が手入れを怠っているかが簡単にわかってしまう。はじめは見栄を張って頑張るが、八月にもなると僕らは水もやらず、芝刈りもしない状態になってしまうんだな。芝刈りのアルバイトに頼むこともあるよ。

砂漠のようなテキサスにはもともと芝生など存在しなかったのだ。それなのに人々は無理矢理、家の周りに芝生を植えてみる。芝生は家を美しく見せることもあるが、実は我々の大切な水を浪費させ、芝刈りのために高価な芝刈り機とガソリンを必要とし、人間の体力を消耗させるやっかいなものである。

Taro
「やれやれ…」

[2002年6月22日]

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